心理学小話 〜人が恋に落ちる場所〜

あなたにもし片思いの相手がいたとき、あなたはどんな場所にその相手と出かけたいですか?気になる相手と楽しい時間を過ごすための場所となれば、何処でもいいという人もいるかもしれませんが、大抵の場合、具体的に何ヶ所かぱっとでてくるのではないかと思います。逆に好きな人とのデートに行きたくない場所というのも、幾つかあるのではないでしょうか?一概に言うことは難しいですが、ある心理学の実験に拠ると、人が異性に対して魅力を感じやすい場所というのがあるようです。

心理学者ダットンとアロンに拠る、面白い実験データがあります。カナダのキャピノラ川の上流の渓谷にかかる吊り橋を渡った直後の男性に、ある女性がインタビューをします。彼女は「自分は風景と人間の創作の関連性について勉強しているので、協力をお願いします」と男性に頼みます。そして、幾つかの絵をみせて、物語を作ってもらったあとに、「この実験結果の詳細を知りたいのならば後日電話を下さい」といって電話番号を各男性に渡します。この実験でインタビューされたのは23人の男性で、そのうち18人がその場で電話番号を受け取りました。さて何人のひとが実際に彼女に電話をかけてきたでしょうか?

丁度、半数にあたる9名の男性が、後日彼女に電話をかけてきました。比較材料として、固定された普通の橋を渡った直後の男性22人にも同じ実験をしましたが、電話番号を受け取ったのは16名、そのうち電話をかけたのは2名でした。更にインタビュアーが男性の場合は、双方の結果が大きく下回りました。吊り橋は23人中、電話番号を受け取ったのは7名で電話をかけてきたのは2名でした。固定橋になると、番号を受け取ったのが6名で、電話をしてきたのは1名のみでした。

インタビュアーが女性

インタビュアーが男性

番号を受け取った人

電話をかけてきた人

番号を受け取った人

電話をかけてきた人

吊り橋(23人中)

18人

9人

7人

2人

固定橋(22人中)

16人

2人

6人

1人

では、この差はどこからでたのでしょう?心理学者ダットンとアロンに拠れば、人が肉体的、生理的に興奮しているときに、ある心理的な刺激を与えると、刺激に対する人間の対応に変化が見られるということです。深い峡谷にかかる不安定な吊り橋を渡ったあとは、心拍数や呼吸数の上昇といった生理的興奮が見られます。そこに、女性が現われて、暫くの間会話を交わし、電話をしてくれと頼まれると、生理的興奮を感情的興奮に置き換えてしまうのです。言い換えれば、いま自分がどきどきしているのは、吊り橋を渡った直後だからではなく、この女性が魅力的だからなのだという置き換えが起きるのだとダットンとアロンは説明をしています。

アクション映画で、主人公が危機に陥ったときに現われる女性と恋に落ちる、というのはよくある筋書きですよね。これもひょっとしたら、この実験データの表すような、生理的喚起の認知(この場合は生理的に興奮すること)の誤りが大きく関与していることが原因かもしれませんね。あなたも気になる相手がいるときは、初めてのデートには生理的に興奮する場所に行くといいかもしれません。遊園地でジェットコースターに乗ったりするのが、意外と効いたりするのです♪

Nov 2nd 2000